まつやまワールド    WORLD U
大雪山・旭岳 2290m
2006.8.14
その1

姿見ノ池から見る旭岳


 旭岳は2004年10月に一度訪問したことがある。
 その時は、大雪山旭岳ロープウェイで登ってきただけであり、登山ではなかったが、ガスの中から一瞬紅葉の夕日に染まる旭岳を見ることができた。

 今回はお盆休みを利用して、層雲峡から大雪山・黒岳1984mに登り、そこから旭岳まで縦走しようという計画である。ビデオや本、HPなどで入念に下調べをして、さらにお盆の天気を見極め晴れるようであれば早朝、松山空港から羽田経由旭川空港へ一気に飛び、層雲峡へ入るという予定だ。ゆっくりと時間がないため、少しでも早く山頂に立ちたいが、陸の孤島・愛媛県西予市からでは、1日目に層雲峡までが精一杯。交通費がかさむので、宿泊は節約してYHを利用することにした。

 飛行機の予約もなしに、お盆のキャンセル待ちという、一か八かの賭だったが、単独であるためなんとか予定通り旭川まで行くことができた。晴れてはいるが、大雪には雲がかかっている。夏の大雪はこんなものだろう。

 空港からバスで旭川駅まで行き、JRで上川まで行く。各駅停車。考えてみれば、旭川から直通で層雲峡まで行くバスもあったようだが、目標がYHなのでのんびりとしてしまった。おかげで初日は旅行気分。層雲峡は何回もきたことがあるが、公共交通機関でくるのははじめて。

 上川からバスに乗り換えたが、途中で下車する人もなく、お盆というのにたった3人の客を層雲峡まで運んでくれた。雨が降りそうな空模様だったが、時間もあることだしすぐにはYHに行かずに、ビジターセンターで情報収集などをする。熊出没中、注意ということだった。しかし、熊はいつもいるでしょ、という感じ。

 黒岳までは、学生時代に登ったことがあるが、なかなか大変だったような記憶がある。しかも、今日宿泊する層雲峡YHもそのとき宿泊したのだった。夜のミーティングで黒岳登山を進められてそこまで登ったのである。そのときのスタンプ帳も持ってきた。懐かしい!そんなことを思いながら夕方YHの玄関に立った。

 外観は見覚えのある感じだが、室内はほとんど覚えていなかった。そのときと違う点が明らかに3つある。まず、アルコールが飲める。時代は変わったのだ。次に、外人が多い。最後は、宿泊者がおじんばかり。当時は、若者ばかりだったのだが、最近は若者はYHのような、料金が安いところは来ないのか。当時の若者がそのまま年をとって、その人たちがやってきている感じ。私はあまり豪華さなど気にしないので、1泊3食付きで4870円は大変ありがたかった。

 YHの周りには、あれから大型ホテル・ホテル大雪と層雲峡グランドホテルが立派に建っていた。夕食までの時間を利用してホテル大雪の展望浴場で温泉に入る。500円也。ホテルに宿泊した気分になる。後はYHに帰って夕食を食べビールを飲んで寝るだけ。朝早いので、昼の分も併せておにぎりを作ってもらう。

 YHには、同じく登山目的の人もいた。すでに旭岳まで往復してきたとか。層雲峡から旭岳往復はちょっと遠すぎるんじゃないの?でもあなたは若いから行けたんだね。などという会話をしたり。彼は疲れて夕方早くから寝ていた。翌日は、羅臼岳へ向かうと言っていた。部屋は8人部屋だからね。すぐに友達もできる。

 14日は朝一6:00発の大雪山黒岳ロープウェイに乗れるように早く起きる。5時起き。余裕を持って乗り場まで行った。ここで、朝のおにぎりを食べながら順番をとって並ぶ。快晴、ラッキー。でも、朝だけだった。夏の山の天気ってこんなもの。すぐにガスが出てくる、と聞いていた。高校時代、栂池に2週間滞在していたことがあったが、白馬岳が見えたのは1日だけだった。どこでもなかなか山はすっきりと見えないんだよ。

 それにしても、まずまずの天気の中を、やや中高年のペースでお鉢の東、北海岳を経由するルートに決め、間宮岳を目指し、そこから旭岳を登って姿見に下山した。さらに旭岳ロープウェイで下ったのだが、1日に3本しかないという14:35発旭川行きのバスに1分違いくらいで乗り遅れてしまった。時間のセッティングがいい加減じゃないか、と怒るもののあと3時間待つしかない。タクシーもいない。

 旭岳登山口で途方に暮れていると、同じような登山者が他にもいたのだった。名古屋からきたというおじさん発見。おじさんには声をかけやすい。こうなったら恥も外聞もないということで、一緒になんとか旭川まで帰ろうと言うことで意見が一致。タクシー代を割り勘にすることをまず決めた。タクシーを呼ぼうと交通整理をしているお兄さんに相談すると、1台がもうすぐお客を乗せて来るという。ラッキー。こういう場合は交渉すれば値引きしてくれるはず。

 タクシーがやってきて、旭岳登山口から旭川までいくらかかるかと聞くと約12000円という。帰りなんでじゃあ8000円で、ということで交渉成立。一人4000円。次はレンタカーを探さなければならない。まだ、午後3時前なので、この日のうちに「北の国から」でシューと五郎がふたりで入った露天風呂、吹上温泉に行きたかったのだ。

 名古屋のおじさんにそのことを話すと、実はおじさんもレンタカーで旭岳登山口まで来たかったのだけれど、旭川市内のレンタカー屋さんでレンタカーを借りれなかったらしい。どうも内地から予約をしておかないといけないのだそうだ。飛び込みで車を借りに来た人が事故やスピード違反などをする例がとても多く、免許書だけだと住所変更などがあったりで後処理に問題が残るためだという。だから、免許書の他に保険証などの提出が必要なのだそうだ。

 じゃあ、旭川市内に行っても遠回りだし、車を借りれないのなら空港に行ってくれ、ということになり、旭川空港へ。そのまま帰ってもよかったが、吹上温泉と十勝岳へも登ろうということが後ろ髪を引いて、レンタカーを探した。飛行機で昨日着陸するときに、レンタカー屋さんのひろいひろい広場に気の毒なくらいたくさんの車が留まっていて、これだけ車が余っていたらこの業界も経営がさぞ大変だろうな、などと思ったのも思い出し、空港レンタカーならなんとかゲットできると考えたのだ。

 しかし、空港へ行って驚いた。山のように車は置いてあるが、すべて予約車ということ。何件もレンタカー屋さんを回ったが、どこも空き車はなしということで門前払い。どうにもならないという。最後にトヨタレンタカーへ行き、しばらく待っているとビッツが帰ってきて、これでいいならそのまま貸してあげましよう、というのでそれを借りてさっさと美瑛の丘へ向かったのだった。

 そのレンタカーを探し回る間、名古屋のおじさんとタクシーの運転手さんは、辛抱強く私に付き合ってくれた。もしもない場合は旭川市内へ行かなければならなくなるので、それを心配してくれたのだ。ありがとう、旅の出会いもうれしいものを感じる。結局、保険証もなしで何とかなった。3日間借りて、富良野や旭川をぶらりとしようか、みたいな気分だった。

 その後、通り雨などもあったが、毎年来ている丘めぐり。ケンとメリーの木、マイルドセブンの丘、親子の木、などなど一通り走り回り、夕食や翌日の食料をコンビニで仕入れて吹上温泉へ。なんかこの辺の道はいつも見る風景、縁があるのだろうか。しかし、吹上温泉と十勝岳ははじめて。また、今日の宿泊の白銀荘もはじめて。ここは食事は持ち込み。また、スキーヤーズベットみたいで男女同室。こんなところもあるのかあ、と思った。

 白銀荘へ着くと荷物を置いて早速お目当ての吹上温泉へ。どんなところかワクワク。温泉の上には広い駐車場があり、車で宿泊している人もいた。すでに人も入っている模様。
 露天風呂へ降りていくと、地元のおじさんおばさんたちがわいわい話しながら上の段の風呂で湯治のような感じで入っている。テレビの雪の中のシーンとは随分違うな。さらに下へ降りていくと、やや広い風呂ではあるが、全然雰囲気が違っている。ライダーなどもおり、全く違う。
 一応、テントの中で服を脱いで、タオル1枚で露天風呂に入るには入ったが熱いではないか。そんなに長く入れないぞ。冷たい水が出ている部分があったのでその側に寄ったが、4,5人の人がその熱いお湯に入ったり出たりしていた。石けんで洗うことはできない。とにかく熱くて、自分も入ったり出たり。露天風呂なので、下は土もあり、きれいとか、ロマンチックとかいう雰囲気からはほど遠い。

 おまけに、TVで有名になったことで、カップルなんぞもやってきて、しかも、お湯にも入らずに見に来ただけみたいな若い女性も2,3人。こっちは、熱いんでどうしようかと出たり入ったりしているのに、さっさと入るのか帰るのか決めてくれ、という気になる。まあ、タオル1枚で山の中の温泉に入る方が悪いのかもしれないが、ここは時期を選んでこないとえらい目に遭う場所だった。無料だったが、長居は無用なので宿に帰り、白銀荘のすばらし吹上温泉を満喫したのだった。

 暑さのためか、ゆっくりとは寝付けなかったが、明日の天気を気にしながら十勝岳に思いを馳せたのだった。

 

13日:早朝西予市発 空路羽田経由旭川空港へ 12:50 => JR旭川 13:39発 上川 14:53着=> 道北バス 上川 15:00発 層雲峡 15:30着 (層雲峡YH泊)
14日:5:30 層雲峡YH出発 => 6:00 大雪層雲峡ロープウェイ => 6:20 登山リフト => 6:35 黒岳登山口 => 8:00 黒岳山頂 => 8:30 石室 => 10:00 北海岳 => 11:05 間宮岳 => 11:50 昼食 => 12:45 旭岳山頂 => 13:00 下山開始 => 14:05 姿見ノ池 => 14:20 姿見駅
 
 (速報版レポートはこちら)
<画像をクリックで拡大します>
1.富良野上空

 パッチワーク模様が見えてきたらいよいよ旭川着陸
2.各停列車

 旭川から上川までのJR北海道の車両。のんびりと終着駅の上川まで走ってくれた
3.昔懐かし、扇風機

 JR各停は、クーラーはない
4.旭川駅の駅弁

 ウニ・いくら弁当。ウニはやや硬め。空港などで食べるものと思うと期待がはずれる
5.上川駅前広場

 上川の名はよく聞くが、駅前は割と殺風景。ガスコンロ用のボンベを買いたいが、どこにもありそうにない
6.JR上川駅

 歓迎の看板だけがよく目立つ。お盆というのに、観光客の姿はない。ほとんどがマイカーや直通バスで層雲峡へ入るためか。
7.道北バス

 層雲峡行き。お客は3人だけだった。途中からも誰も乗ってこない
8.層雲峡YH

 このたたずまいには見覚えあり。21歳の時に車で訪れたのだった
9.YH玄関

 以前は坂を登ってきたような、山の中だった気がするが今では隣に大型ホテルが建つ
10.ホテル大雪

 YHはこのホテルのすぐ前なので、温泉に行くのはグッド。YHに割引券がある。
 最上階露天風呂からは、大雪山・黒岳方面が見える
11.ロープウェイ乗り場まで歩く

 YHから乗り場までは下り。5分程度。
 以前はこんなに立派な道ではなかった。
12.ロープウェイ山麓駅と黒岳
 
 快晴の朝の黒岳1984mと桂月岳1938m
13.ロープウェイ山頂駅

 始発6:00のロープウェイを利用してまずは黒岳を目指す。多くの登山者で満杯
14.黒岳

 層雲峡から見上げた黒岳山頂。独特の山容をしている
15.黒岳から桂月岳へと続く尾根 5:40am

 
16.山麓駅

 登山者が始発のロープウェイ目指して早くから集まる
17.層雲峡温泉街

 黒岳沢の流れを集め、温泉街を流れる
18.ガスが立ちこめる早朝

 層雲峡には朝、山々にガスが垂れ込めていた
19.陵雲岳2125m

 黒岳沢の奥、中央やや左が陵雲岳。ここへの一般登山道はない。
 中央やや右が上川岳1884m
20.桂月岳1938m

 中央、山肌が削られたように見える山が桂月岳。
 石室から15分で登れる。石室は桂月岳と左の黒岳の鞍部に当たる。黒岳から桂月岳に向かって下って歩くことになる
21.黒岳山頂駅

 山頂駅付近は黒岳五合目
22.黒岳五合目より層雲峡方面

 層雲峡は朝霧で覆われている。その向こうに平山1771mが顔を出している
23.黒岳5合目の看板 

 一般の人はここまで簡単に訪れることができる。さらにリフトに乗れば上までいけるが、黒岳に登らない場合は、あまり景色に違いはないかもしれない
24.五合目リフト乗り場へ向かう

 ロープウェイの黒岳駅からリフト乗り場までは約200m
 
25.大雪を目指す登山者たち

 6:10am。
 みんな黒岳やそこからのお鉢周り、トムラウシや旭岳を目指している
26.ロープウェイ黒岳駅

 標高1300m
27.リフト乗り場

 ここからは緩やかな勾配のリフトで7合目まで行く
28.リフトから黒岳1984mを見る

 リフトも新しくなっていた。前は25年以上前に乗ったので、当たり前か。ユーミンの曲が流れていた
29.黒岳山頂

 黒岳山頂に着くと、この絶壁感は全く感じない。お鉢方面ばかりに気が向くためだろう。
 一番左の尖った岩が、山頂に着くまでランドマークとして主張していた
30.小花之江河5

 南方向
 これまで歩いてきた登山道。木道の階段はこの上に当たる
31.7合目より層雲峡方向を見る

 層雲峡は相変わらず朝霧の下。

 正面の山は、ニセイカウシュッペ山1883m
32.7合目展望台にて

 ここから見た風景が、No.31の写真
33.リフト山頂駅(降り場) 1520m

 リフトのお陰でここまでは楽に来れた。こういう乗り物は大歓迎。バリバリの体育会系でなくても山頂が身近になる。
 学生時代、山岳部がリュックに石をいっぱい積めて比治山で練習していたが、あれを見たとき山には行きたくない、と思ったものだった
34.登山届け提出

 黒岳は登山道にゲート(管理小屋)があって、厳重に登山者を管理していた
35.登りはじめ 6:35am

 ゲートを抜けるとすぐに山道となる。ここから黒岳山頂までは登りが続く
36.黒岳登山道

 火山性の山のためか、石ころも結構ごつごつとした道だ。
37.登山道脇には高山植物も

 お花畑とまではいかないが、アザミのような高山植物が一時の夏を惜しむかのように頑張って咲いている
38.黒岳9合目

 この辺りで秋田からやってきたというおじさんと一緒になり、シャッターを切ってもらった
39.まねき岩が見えてくる

 ここらからは、その方といろいろな話をしながら山頂まで登る。
 カメラの話に花が咲く。ミノルタとか、キャノンとか、ソニーとかで。カメラの使い方について聞かれたが、もっとゆっくり話をしたかったところ。
40.まねき岩

 この岩は特にシンボリックで、リフトからも確認できた。兵隊が立っている感じ。黒岳のジャンダルムだ
41.まねき岩付近より山頂方面

 見上げたところなのでわかりにくが、森林限界を超え木々はない
42.山頂直下の登山道

 9合目を超えると見晴らしも断然いい
43.9合目方向を振り返る

 次々に登山者が登ってくる
44.まねき岩を越える 7:48am

 下からは随分と山頂方面に見えていたが、これを越えてもまだ山頂は上だ
45.まねき岩 最接近

 近くで見ると人が3人立っている感じ
46.チシマノキンバイソウ

 ミヤマキンポウゲのようにも見えますが、大雪なのでこの花に間違いないでしょう
47.山頂到着 8:00am

 山頂に着くと景色は一変。雄大な大雪山系が広がる。旭岳にはすでにガスがかかって見えないが、夏の高山はこれでもよい方ではないだろうか。

 正面にはお鉢手前の雲の平らが広がる
48.黒岳山頂にて

 地図によるコースタイムは、リフト降り場から1時間10分。看板には1時間30分と書いてあったから、こんなもんだろう。
 しかし、ここから先が本番なのだ
49.黒岳から見る北鎮岳と陵雲岳

 左ピークが北鎮岳2244m、右・ガスがかかりそうなのが陵雲岳2125m。
 文字通り、2000m級の北海道の屋根である
50.石室へと続く道

 ここからは北鎮岳へ行くにも、北海岳へ行くにも一旦石室まで下らなければならない
次へ→
[Index] [MATSUYAMA World]